気象病を防ぐ方法

ゆらぎ肌のスキンケアのポイント


新生活が始まり、慌ただしい日々を送っている方も多いと思います。新しい環境への変化は心身共にストレスが大きく、それにより肌トラブルで悩まれる方が増えます。それだけでなく、春先は花粉や紫外線、もう少し暑くなってくるとエアコンによる乾燥など、様々な刺激により肌がゆらぎやすいシーズンです。

“肌がゆらぐ”とはどういうこと?


肌がゆらいでいる時は、一般的に肌の「バリア機能」が低下した状態です。
バリア機能とは、言葉通り外部からの様々な刺激から身体を守るバリアとしての役割のことを言います。このバリア機能は肌の一番表面にある角層の状態によって左右されます。通常角層では、角質細胞と呼ばれる肌の細胞がびしっと規則正しく密に並び、その隙間はセラミドに代表される「細胞間脂質」というものによって満たされています。よく角質細胞がレンガに、レンガとレンガを接着するモルタルが細胞間脂質に例えられますが、レンガとレンガ同士を接着するモルタルによる密な構造があるからこそ、外からの刺激をブロックでき、また同時に肌の水分の蒸発を防ぐことができるのです。

このバリア機能が低下する原因には、先ほどお話しした紫外線などの太陽光線や花粉などのアレルゲン、エアコンなどの外気環境の他に、過剰な洗顔などによる誤ったスキンケアや、加齢なども挙げられます。

いずれの原因にしてもバリア機能が低下すると水分が蒸発しやすくなってしまうため肌は乾燥し、外からの刺激も感じやすくなります。その状態が進行すると赤みやかゆみといった症状も伴うようになります。

肌のバリア機能を高めるには“保湿”が大切

いつもと同じ化粧品を使っていても刺激を感じたり、乾燥を感じたりするような場合はバリア機能が低下している一つのサインです。早めに対策するようにしましょう。バリア機能を高めるためには、何よりも保湿が重要です。

保湿クリームなどの保湿を目的とするアイテムには、「エモリエント」と呼ばれるものと「モイスチャライザー」と呼ばれるものがあります。エモリエントはワセリンなどに代表されるような、肌を保護して水分の蒸発を防いてくれるようなアイテムで、モイスチャライザーはそれだけでなく肌の中で水分を蓄えてくれるような、グリセリンなどの保湿成分が配合されているアイテムのことを言います。市販の保湿アイテムはほとんどがモイスチャライザーですが、油分の割合やテクスチャーなどによって保湿ローション、保湿ジェル、保湿クリームなどとその名称が変わってきます。

一般的にエモリエントよりもモイスチャライザーの方が保湿力は高いのですが、バリア機能の低下に加えて湿疹などの炎症が起こっているような場合ですと、使用するモイスチャライザーによっては刺激となってしまう可能性があります。赤みやかゆみを認める場合は、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。

次に保湿アイテムの選び方ですが、肌がゆらいでいる時は低刺激設計のものをおすすめします。防腐剤や香料、アルコールといった成分は刺激になりやすく、人によってはアレルギーを引き起こす可能性もあります。そういった成分が配合されていないアイテムがいいでしょう。

また、敏感な肌の人には、より高いレベルでの安全性をチェックしている「アレルギーテスト」や「敏感肌の方のご協力によるパッチテスト」は製品の選択の目安になります。

保湿によってバリア機能を高めるためには、保湿力が高いものを選ぶことももちろん有効です。ただし注意したいのは、保湿アイテムの中で具体的にどの製品が最も効果が高いかについてはその方の肌によっても異なってくる、ということです。最近ではSNSなどで話題となっている製品を購入する方が増えていますが、必ずしも自分の肌でも同じかというとそうではないということはぜひ覚えておきますしょう。

保湿力を左右する一つの要素は保湿成分です。保湿成分には様々なものがありますが、中でもおすすめは肌本来のバリア機能を高めてくれる成分で、具体的には
・セラミド
・アミノ酸
・ヒアルロン酸

といった成分があります。特にセラミドは、肌のバリア機能を担う細胞間脂質のおよそ50%を占める成分です。そのためセラミドを外から塗って補うのは非常に理にかなっていることがお分かりいただけるかと思います。

セラミドなどの肌本来の保湿成分は、実は誤ったスキンケアによっても減ってしまいます。
その一つが「洗顔」です。洗顔は本来メイクなどの汚れを適切に落とすことを目的としますが、ゴシゴシと必要以上に行うとバリア機能を担う細胞間脂質や天然保湿因子といった成分を流出させてしまい、そのためバリア機能の低下をもたらします。

肌がゆらいでいるときは“洗顔”に注意!


肌がゆらいでいる時は実は保湿だけでなく洗顔も非常に重要で、できるだけ優しく洗顔するということがポイントになります。洗顔料はすぐにへたらないようなもっちり泡になるまでしっかり泡立てて、その泡を潰さないように優しく顔に当て、軽く撫でる程度に洗い流すようにしましょう。もし泡立てるのが苦手な場合は、最初から泡で出てくるタイプの洗顔料が使いやすくおすすめです。

洗顔料については、しっかり泡立てることに加え、できるだけ刺激の少ないものを選ぶということもポイントになってきます。洗浄力は洗浄成分である界面活性剤の種類や濃度によって大きく変わってきますが、一般的に刺激が少ないと言われているのはアミノ酸系の洗浄成分となります。

またメイクをされる方は、洗顔料に加えてクレンジング剤も使用する、いわゆる「ダブル洗顔」をされる方が多いと思います。ダブル洗顔の場合、どのようなクレンジングを使ったいいのかわからない、という相談をよくいただきますが、洗顔ではメイク汚れの大方をクレンジングでしっかり落とすことが重要です。当たり前ですが、しっかりメイクをしたらその分メイクを落とすのに洗浄力が高いアイテムが必要になってきます。肌がゆらいでいる時、まずはできるだけメイクを薄くするようにしていただき、肌への負担を減らすようにしましょう。

次に、誤ったスキンケアは「UVケア」です。紫外線は天然保湿成分などの成分にダメージを与え、バリア機能の低下をもたらします。肌がゆらいでいるときもしっかりUVケアを行うようにしましょう。

また、UVケアは日焼け止めだけでなく日傘や帽子といったUVカットアイテムも重要です。ひどい湿疹などで日焼け止めが塗れないようなシチュエーションではこのようなアイテムをうまく活用するようにしてください。

肌がゆらいでいるときこそ“シンプルなケア”を


肌がゆらいでいるときは、シンプルなケアを心がけることがとにかく重要です。特にやりがちなのが、一生懸命保湿しようと保湿ローション、保湿クリームと色々なアイテムをいくつも重ねる行為です。実は、保湿アイテムは重ねれば重ねるほど保湿力が高まるわけではありません。それだけでなく、塗り重ねることによって肌への摩擦も増え、肌にとっては負担となってしまうため避けた方がベターです。それに、塗るアイテムが増えるとその分肌に乗せる成分の種類も増えます。最近の化粧品は多機能なアイテムが多く、一つでたくさんの成分が配合されているものが増えています。

そのようなアイテムは肌がゆらいでいる場合は注意が必要で、成分によっては肌に負担となり、肌のバリア機能を高めるどころか、かえって低下させてしまう可能性もあります。そのため、余分な成分が入っていないシンプルなアイテムを使うように心がけましょう。そして使うアイテムの数もできるだけ少なくなるように気をつけましょう。

その上で先ほどお話ししたように
・しっかり保湿
・優しい洗顔
・UVケア

といった基本のケアをそれぞれ見直していただくことがバリア機能を高めるスキンケアのポイントとなります。肌のバリア機能は立て直しに数週間を要することが多いです。ご自分の肌としっかり向かいあい、肌の負担となっていないかご自分のスキンケアを一度見直していただくことをおすすめします。

この記事の監修者
小林 智子/皮膚科専門医・医学博士
小林 智子/皮膚科専門医・医学博士
日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医であり、専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。
食事や健康に関する情報発信と商品開発を行っているWEBサイト「ドクターレシピ」の監修ほか、SNSによる情報発信、メディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

♦︎「ドクターレシピ」
http://whatts.net/
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