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2024年も猛暑に!? 今夏の見通し【気象予報士解説】

気象予報士解説 2024年も猛暑に!?今夏の見通し

全国的に記録的猛暑となった去年(2023年)の夏は、体温を上回るような危険な暑さが続出し、統計史上1位の暑い夏となりました。去年の暑さは日本だけでなく、世界平均でも過去最高となり、国連の事務総長は「地球沸騰化」の時代が始まったと気候変動による異常な暑さを全世界に訴えかけました。
梅雨入りが記録的に遅い今年の夏も去年のような猛暑になるのか、雨や台風の傾向も含めた独自の見通しを頭痛ーるの気象予報士がズバリ解説します。

目次


ラニーニャ発生で異常気象に要注意な夏に
夏の前半:梅雨期間から猛暑と大雨に注意!? 線状降水帯も!
夏の後半:お盆以降に厳しずぎる残暑! 台風は接近しやすい!?
記録的猛暑の2010年と同じパターンに!?
2024年夏の体調管理ポイント

ラニーニャ発生で異常気象に要注意な夏に

気象庁は「今年の夏のうちにラニーニャ現象が発生する」という予想を発表しています。ラニーニャ現象とは、南米ペルー沖の赤道付近の海面水温が平常時より低くなる現象のことです。日本からは遠く離れた海でのいつも異なる変化が伝播して、世界規模で気圧配置に大きな偏りが出やすくなることで様々な異常気象を頻発させる場合があります。
ラニーニャ現象とは気象庁 ラニーニャ現象発生時の海面水温の平年偏差分布図を元に作成
https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html

日本では、ラニーニャが発生すると、夏の暑さを強め、冬は寒さを強める傾向があります。また、今年は春まではエルニーニョ現象(南米ペルー沖の赤道付近の海面水温が平常時より高くなる現象)が発生したため、冬が暖冬となりました。このようにエルニーニョからラニーニャに切り替わっていくタイミングでは、より極端な気象現象が世界規模で出現しやすいため、異常気象に要注意な夏となりそうです。

夏の前半:梅雨期間から猛暑と大雨に注意!? 線状降水帯も!

前回のラニーニャ現象が発生していた2022年夏は、梅雨の真っ只中の6月25日から7月3日にかけて、東京都心で過去最長となる9日連続の猛暑日(最高気温35℃以上)を記録しました。この年は梅雨期間に真夏のような強烈な日ざしと猛暑がやってきたかと思えば、7月5日前後からは梅雨前線による大雨が全国で頻発しました。

今年も太平洋高気圧の張り出しが平年より日本の南で強く、暖かい空気が流れ込みやすいため、全国的に高温になる予想となっています。近年進行している地球温暖化の影響で地球全体の温度のベースが年々上昇していることも暑さをさらに強める要因となりそうです。一方で、西日本を中心に熱帯並みの湿った気流が入る影響で梅雨前線が活発化したタイミングでは大雨にもなる恐れがあります。今年は2022年のように夏の前半から「猛暑」と「大雨」が隣り合わせでどちらもやってくる可能性があります。特に梅雨末期のタイミングには、同じ場所に発達した積乱雲が次々と流れ込む「線状降水帯」による集中豪雨に対して、今夏も十分に注意する必要がありそうです。
気象庁 予想される海洋と大気の特徴の模式図より引用
https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?term=P3M

夏の後半:お盆以降に厳しずぎる残暑! 台風は接近しやすい!?

 ラニーニャ現象が発生していた2020年は、お盆過ぎの8月17日に日本歴代最高気温タイ記録の41.1℃を静岡県浜松市で記録するなど熱波に見舞われました。ラニーニャが発生している年はお盆以降に厳しい残暑になる傾向があります。今年の夏の後半も暑さが強まり、猛暑日や熱帯夜(最低気温が25℃を下回らない)が広範囲で続く熱波がやってくるかもしれません。厳しい暑さの長い夏に対して備える必要がありそうです。

日本の歴代最高気温ランキング

 また、蒸し暑い日に上空の寒気が入ることで、大気の状態が不安定になる日も夏の後半や梅雨末期には多くなりそうです。内陸部や山沿いを中心に熱帯のスコールのような激しい雷雨に見舞われるケースも増加する可能性があります。アスファルトに覆われた都心部ではヒートアイランド現象によって、地上付近が熱せられて、さらに発達した積乱雲によって激しい雷雨に要注意です。

 台風の発生する位置は、ラニーニャの年には、日本に近い海域で発生しやすい傾向があります。前回のラニーニャが発生していた2022年の台風14号は、小笠原近海で発生し、わずか4日後には大型で非常に強い勢力で鹿児島県に上陸・九州を縦断。日本列島広域に暴風雨による大きな被害をもたらしました。この台風のように、ラニーニャ時は、台風の発生する位置がいつもの年よりも北や西にずれる傾向があり、発生から短い期間で日本列島に接近して大きな影響を及ぼす恐れがあります。さらに今年の夏も海水温が日本周辺で平年よりかなり高くなる予想のため、台風が強い勢力を維持したまま、発生後、早いタイミングで接近・上陸の可能性もあります。

記録的猛暑の2010年と同じパターンに!?

8月以降は秋雨前線の影響も加わる北日本では、雨の量が多くなる恐れもあります。今年の予想と同じく「春にラニーニャが終息し、夏の終わりにラニーニャが発生した2010年の夏は、記録的な猛暑で全国で過去最悪の1745人が熱中症で命を落としました。
2010年は北日本で雨が多くなり、記録的な高温多湿で農作物の被害が大きくなりました。今年も収穫期を迎えるタイミングで、大雨や台風が頻発した場合は、農作物被害などにより、秋の味覚にも影響が出る恐れがあります。

2024年夏の体調管理ポイント

【今夏の猛暑・大雨に備えた体調管理ポイント】
①早めに「暑熱順化」を進めよう
②家族みんなで熱中症&夏バテ予防
③急な激しい雨や天気急変時の不調に注意

ポイント①:早めに「暑熱順化」を進めよう

 暑さに体を慣れさせて、汗を上手にかいて、熱を逃がしやすくする体にモードチェンジさせていくことを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。今年は梅雨真っ只中の6月下旬や7月上旬から本格的な暑さが度々やってくる可能性がありますので、出来るだけ早いタイミングに暑熱順化を進めましょう。
暑熱順化に有効な方法は、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどを「やや暑い環境」で、「少しきついと感じる程度」の強度で、毎日30分ほど続けること。30分の運動が難しい場合は、湯船にゆっくりと浸かって入浴することも効果的。ポイントは、汗を適度にかくまで運動や入浴をすることです。個人差はありますが、このような暑熱順化トレーニングを2週間程度続けることで、夏の暑さへの対応力が徐々に身についていきます。
「暑熱順化」を促す方法※参考:https://zutool.jp/column/prevention/post-28078

ポイント②:家族みんなで熱中症と夏バテ予防!

 光熱費の高騰で節約意識は高まっていますが、冷房は適切に利用して、暑さから体を守りましょう。炎天下を避けたり、公共施設の涼しい場所(クールシェアスポット)を有効活用をすることもおすすめです。
 外を歩く際は、地面からの照り返しが原因で、大人以上に子供やペットはかなり暑い状態になるため、暑い時間の外出を出来るだけ控えるなど、しっかりと暑さ対策をする必要があります。
地面からの照り返しに注意※参考:お天気.com記事よりhttps://hp.otenki.com/8583/

高齢者は喉の渇きを感じにくく、体内の水分量自体が少ないため、脱水症状になりやすい特徴があります。喉が渇く前からこまめな水分補給を家族みんなで心掛けて、熱中症を予防しましょう。
夏の水分補給には牛乳がおすすめです。牛乳には「タンパク質」「脂質」「炭水化物」の3大栄養素に加え、ビタミン・ミネラルが豊富で、塩分(ナトリウム)も適度にあり、熱中症予防効果が期待できます。頭痛の大敵でもあるストレス緩和に役立つカルシウムが豊富で、安眠の手助けをしてくれるトリプトファンもたっぷり含まれます。日頃からの頭痛予防と暑さに負けない体づくりのためにも毎日の牛乳を習慣づけるのも良さそうです。
夏の水分補給に牛乳!?※参考:https://zutool.jp/column/prevention/post-28078

ポイント③:急な激しい雨や天気急変時(ゲリラ雷雨時)の体調管理

 蒸し暑い日に雷雲が発生・接近すると、急に気圧が下がったり、通過後には急に気圧が上がったりと短時間で気圧がアップダウンすることがあります。この目まぐるしい気圧の急激な変化によって、頭痛やめまいなど体調も急変する場合があります。特に小刻みな気圧変化に影響を受けやすいタイプの方は、近くで雷の音が聞こえた時は、体調変化に気を付けるようにしましょう。
雷雲の接近は体調急変にご注意を※参考:https://zutool.jp/column/glossary/post-28487

さらに、急に強い雨や雷雨になった後は気温が急降下することがあります。ゲリラ雷雨が起きる前の非常に蒸し暑い状態から、30分程度で一気に10℃以上も気温が下がることがあり、体調変化や服装の調整にも気を付ける必要があります。

猛暑や大雨、激しい雷雨も心配な今年の夏ですが、日々の体調管理にはWith頭痛ーるで健康的にお過ごしください。
「頭痛ーる」とは?

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この記事の監修者
森山 知洋
森山 知洋
気象予報士/健康気象アドバイザー/防災士/北海道防災教育アドバイザー

20年以上の気象予報士歴の中で放送局の気象キャスターなど様々な業務を経験。健康気象講座や防災講演の講師を務めるなど健康気象や防災のスペシャリストとしても幅広く活動中。
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