気象病の基礎知識

しっかり向き合おう、小児の頭痛

しっかり向き合おう、小児の頭痛

はじめに

子どもたちの健康は、親や教育者にとって最優先事項です。しかし、子どもがしばしば経験する頭痛や片頭痛については、十分な理解や対応がなされていないことが多いです。特に気象変化や生活習慣が頭痛の原因となることが多く、頭痛ダイアリーや薬物療法による適切な対策が必要です。小児の頭痛や片頭痛に関して、これまでの疫学調査や頭痛の診療ガイドライン2021に基づいて、ご説明します。

頭痛の発生頻度と原因

子どもたちの頭痛は一般的な問題であり、多くの家庭で経験されています。糸魚川紅ズワイガニ研究では、2022年4月~8月に、新潟県糸魚川市内の小中高の学生(6~17歳)に対しオンラインアンケートを実施し、その有病率や疾病負担を調査しました。有効回答数2,489例のうち、頭痛は907例(36.44%)、片頭痛は236例(9.48%)、薬物乱用頭痛は11例(0.44%)で認められました。頭痛もちの約70%は日常生活への支障を訴え、約30%は医師に相談していました。また、2024年6月~7月に「いこーよ」と「頭痛ーる」のユーザーへ行った調査によると、75%以上の子どもが頭痛を訴えたことがあり、そのうち約40%は高頻度で頭痛を感じていました。また頭痛の原因としては、気象の変化が大きな影響を与えることが明らかになりました。特に、天気の急な変化や気圧の低下が頭痛の引き金となることが多いようです。

糸魚川紅ズワイガニ研究では、気象以外にもストレスや睡眠などさまざまな片頭痛の原因をアンケート調査しました。頭痛の原因別に回答者を数学的に分類したところ、3つのグループに分かれました。
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 ●グループ1は、さまざまな頭痛原因に対し強い感受性を示しました。
 ●グループ2は、天気、スマートフォンやゲームに対し強い感受性がみられました。
 ●グループ3は、すべての頭痛原因に対する感受性が低かった。
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グループ1は重症なため生活に支障があり、医師の診察も受けている人が多くいました。グループ3は軽症なため、生活に支障がなく、医師の診察も受けていませんでした。
グループ2は、片頭痛による支障が非常に大きいにもかかわらず、医師の診察を受けていない傾向が認められました。
私見ですが、グループ3→2→1と、まるで片頭痛が進行して、ちょっとしたことでどんどん発作が起きるようになっていくような気がしました。グループ1のような重症な片頭痛になる前に、グループ2のうちに適切な治療が必要です。

小児片頭痛の特徴

小児片頭痛は、成人片頭痛と同様に反復性があり、進行して悪化する可能性がある頭痛です。片頭痛の特徴として、体動困難、吐き気、光過敏や音過敏などが挙げられ、これらの症状が子どもの日常生活に大きな影響を与えることがあります。
しかし、小児は症状の言語化が難しく、片頭痛かどうか見分けることが難しいことが大半です。吐き気や腹痛といった症状が中心となり、頭痛がほとんどないこともあります。もしお子さんが腹痛や吐き気(食事を取りたくないという)を訴えたり、光過敏や音過敏(暗いところを好む、布団をかぶる、ゲームなど好きなことを辞める)を示唆するようなことがあれば、一度片頭痛を疑ってみることも大切です。

頭痛対策と治療法

頭痛対策として、生活習慣の見直しや規則正しい生活が重要です。例えば、十分な睡眠を確保し、ストレスを軽減することが推奨されます。生活習慣を見直すのに役立つのが、頭痛ダイアリーです。頭痛があったときの症状を記録し、その原因を考察することで、どのように生活を直していけばよいのか、どのようなことを避けるべきなのかなどがわかってきます。さらに、自分の症状を頑張って言語化することも、本人自身の体調への理解に繋がります。
また、天気予報を活用し、気象変化に対策を講じることも有効です。天候の急激な変化が起きるときに、耳や後頭部や首のマッサージや、耳栓、ツボ押し、五苓散などの漢方薬を飲むことで調子が良くなることがあります。
これらの頭痛ダイアリーと天気予報の両方の機能を兼ね備えたのが、頭痛―るです。私も自分自身がユーザーなだけではなく、患者さんにおすすめして普段の診療でも用いています。サマリーでは一月の頭痛の回数や服薬回数がわかるため、紙の頭痛ダイアリーのように数える手間がなく、診療がスムーズになります。

薬物療法は、頭痛ーるなど頭痛ダイアリーを用いた生活習慣の見直しの次のステップです。痛み止めや、トリプタンといった片頭痛専用の治療薬を、痛いときに急性期治療薬として用いることがあります。また頻度が月に何度もあり生活に支障をきたしているのならば、抗うつ薬、抗てんかん薬、降圧薬などによる、片頭痛の予防療法を検討します。これらは片頭痛に適応が通っている薬であり、うつ病やてんかんだと言っているわけではありませんので安心してください。これらの予防療法を行うことで、頭痛の頻度を減らすことができます。

親の役割と子どもへのサポート

親は子どもの頭痛の兆候を見逃さないようにし、頭痛ダイアリーをつけることで、頭痛のパターンや引き金を把握することができます。これにより、効果的な対策を講じることが可能となります。また、子どもが頭痛を訴えた場合は、すぐに休息を取らせ、必要に応じて医療機関を受診し予防治療も含めた検討をしてください。決して、我慢が足りないとか、お母さんも昔そうだったからしょうがないのよ、というような言葉は控えていただければ幸いです。
一方で、典型的な片頭痛ではない場合、起立性調節障害や身体表現性障害のこともあります。薬が有効なこともありますが、本人の心身の発達をゆっくり待つ必要があることもあります。

結論

小児の頭痛や片頭痛は、子どもの生活に大きな影響を与える可能性があるため、早期の対応が求められます。親や教育者は、頭痛の原因や対策について正しい知識を持ち、子どもの健康をサポートする役割を果たすことが重要です。頭痛―るなどの頭痛ダイアリーをもちいた気象の変化や生活習慣の見直し、それでも症状がひどい場合は適切な薬物療法を組み合わせることで、子どもたちが健康で快適な生活を送ることができるよう努めましょう。

参考 糸魚川紅ズワイガニ研究 Katsuki M, et al. Clin Neurol Neurosurg. 2023;226:107610.

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この記事の監修者
勝木 将人/長岡技術科学大学 准教授 医学博士
勝木 将人/長岡技術科学大学 准教授 医学博士
諏訪赤十字病院・三之町病院 脳神経外科 頭痛外来
燕三条すごろ脳脊髄クリニック オンライン診療部門
日本頭痛学会、日本脳神経外科学会、日本メディカルAI学会などに所属。
日本の経済復興のため頭痛啓発運動や頭痛診療に役立つAI開発など行っている。

研究室HP:https://sites.google.com/vos.nagaokaut.ac.jp/health-dx-lab/
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