アイビー・ペットライティング代表
獣医師歴27年の経験を活かし、各方面で活躍。
得意分野は皮膚疾患で、皮膚科・内科を中心とした一般診療に従事。予防にも力を入れている。
犬のライフステージは「パピー」「アダルト」「シニア」の3つのステージに分類します。今回は高齢期とも呼ばれるシニア期についてお話しします。
一般的にシニア期は7歳以上といわれています。しかし、小・中型犬と大型犬を比較すると同じ犬年齢でも人間の年齢に換算した時に大きな差が生まれます。小型犬に比べて大型犬は成長がゆっくりですが、老化は加速するといわれています。体格が大きいと早く成長しているように見えますが、実は逆で小・中型犬の方が成長が早く老化がゆっくりです。
犬のシニア期は7歳からですが、小・中型犬の7歳は人間の年齢では44歳に相当します。一方、大型犬の7歳は54歳に相当するといわれます。犬として同じ7歳ですが、人間年齢に換算すると10歳の差が生じます。
シニア期になるとまず目立つのが、運動量の減少です。体力の低下の影響もあると思いますが、7歳以上のシニア犬では80%近くの犬が関節炎を発症しているといわれています。関節の痛みが原因で動きたくなくなり、さらに新陳代謝の低下や運動不足から消費カロリーが減少することで肥満傾向になります。その他、白内障の発症なども高齢になると起こりやすくなります。
シニア期には食べているのに痩せる、食べる量は少ないのに太る、今まで食べていたものを食べないなどの飼い主さまのお悩みが増えてきます。高齢になるにつれ嗅覚や視覚が衰えてきます。感覚の衰えが食欲に影響を与えることもあります。消化機能の衰えもありますので、消化の良いタンパク質、脂質やカロリーを控えることのできる食事が推奨されます。
先ほども紹介しましたが、7歳以上の犬の80%近くは関節炎を抱えています。痛みから食欲不振など体調不良が起こることもあります。
7歳では腫瘍の発症率は10.1%、10歳になると17.5%の確率で腫瘍が発症するといわれています。腫瘍を早期発見するためには定期的な健康診断が大切です。
全ての犬の10~15%が心疾患に罹患していて、特に10歳以上の犬では30%以上、さらに10歳以上の小型犬の場合は50%以上が心臓疾患であるといわれています。特に変わった様子がなくても、健診の際に心雑音が聞き取れることもあり、治療を必要とする場合もあります。
動物病院で「いつごろからですか?」と聞かれたときにはっきりしないことが多いのではないでしょうか?毎日見ていると体調の変化に気づきにくいことがあります。食欲、元気、排泄の状態、お散歩の足取り、天気、気圧などを記録しておくと、体調の変化に気づきやすくなります。
同様にドッグフードやおやつの名前、その他食べたものなども意外と思い出せないものです。書き留めるのは面倒なこともあるので、写真にとっておくと楽です。お薬も病院でもらった明細や薬のシートなどを写真に撮っておきましょう。
私たちも季節の変わり目や、年齢に伴い体調が変化していきます。特に犬はわたしたちとは年齢の重ね方が異なり、人の1年がおおよそ4年に相当します。あっという間にシニア期を迎えていきます。日々の記録をとり確認していくと変化に気づきやすくなるかもしれません。歳はとっても、マイペースに暮らしていつまでも笑顔の日々を送ってもらいたいものです。