20年以上の気象予報士歴の中で放送局の気象キャスターなど様々な業務を経験。健康気象講座や防災講演の講師を務めるなど健康気象や防災のスペシャリストとしても幅広く活動中。
暑さに体を慣れさせて、汗を上手にかいて、熱を逃がしやすくする体にモードチェンジさせていくことを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。本格的な夏を迎える前に、徐々に体を暑さに慣れさせることは熱中症予防にも大切。人間は暑さにさらされたり、運動や作業で体を動かすと、体の内で熱が作られて体温が上昇します。汗をかくことで体の熱を奪う気化熱や、皮膚血管を拡張させて体の表面から熱を逃がす熱放散によって、正常に体温を調節することができます。この体温調節のバランスが崩れてしまうと、体に熱がたまって体温が上昇し、熱中症を引き起こすことがあります。暑熱順化が整った体質になると、わずかな体温上昇でも適度に汗をかいて、皮膚血管が拡張して、熱を放出できるようになるのです。
暑熱順化に有効な方法は、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどを「やや暑い環境」で、「少しきついと感じる程度」の強度で、毎日30分ほど続けることです。ただ、30分の運動が難しい場合は、湯船にゆっくりと浸かって入浴することも効果的です。ポイントは、汗を適度にかくまで運動や入浴をすることです。個人差はありますが、このような暑熱順化トレーニングを2週間程度続けることで、夏の暑さへの対応力が徐々に身についていきます。このような習慣は自律神経を整え、頭痛予防のためにも一石二鳥ですが、片頭痛の方は、体が温まりすぎると症状が悪化する場合もあるので、無理のない範囲で行うようにしましょう。
牛乳は「タンパク質」「脂質」「炭水化物」の3大栄養素に加え、ビタミン・ミネラルが豊富で、塩分(ナトリウム)も適度にあり、熱中症予防効果が期待できます。牛乳に含まれるたんぱく質により血液や水分の量を調整するアルブミンという成分を作る手助けをしてくれます。アルブミンが増えると、血液中の水分が増加し血流も良くなるため、気温変化に適応しやすくなり、熱中症予防に効果的。大量に発汗した時に飲むスポーツドリンクは、失った水分と塩分の補給に即効性がありますが、牛乳は水分補給に加えて、体の水分量自体を増加させる効果もあり、夏の水分補給にはまさに最適です。
また、運動後の水分補給として、牛乳を飲む習慣を続けることで、上手に汗をかきやすく、血管が開いて熱を逃がしやすい体質へ改善したり、第2の心臓とも呼ばれる足の筋力アップ、疲労回復効果もあるため、暑熱順化を進めている段階の飲料にもピッタリです。また、頭痛の大敵でもあるストレスの緩和に役立つカルシウムが豊富で、安眠の手助けをしてくれるトリプトファンもたっぷり含まれます。日頃からの頭痛予防と暑さに負けない体づくりのためにも毎日の牛乳を習慣づけるのも良さそうです。
また頭痛ーるコラムでは低気圧、気圧の変化による頭痛、体調不良の予防・対処法もご紹介しています。