気象病の基礎知識

犬や猫の気象病(第1回):気象病として現れる症状や行動

犬や猫の気象病(第1回):気象病として現れる症状や行動

犬や猫の気象病に詳しい獣医師の平松育子先生にいろいろお話しをお伺いしました。
お伺いした質問の内容とその回答について2回に分けてお知らせいたします。
第1回は気象病として現れる症状やその時の行動についてインタビューしました。

犬・猫の持病と「気象病」

気象病は頭痛や関節痛、神経痛、めまい、ぜんそくなどの持病を持っている人が気圧などの変化によって症状が現れると考えられていますが、犬や猫もそのような持病があるのでしょうか。

(平松先生)
多くの研究でてんかんや脳腫瘍、脳炎、水頭症、脊髄空洞症、関節炎などの持病がある犬は気圧や天気の影響で持病が悪化しやすいことがわかっています。脳神経系の持病を持っている子はダイレクトに反応がみられ、台風と体調の悪化との関係がよくみられます。腎臓が悪い猫は血管循環障害が起きる可能性があります。

体調が悪くなるタイミング

気圧や天気の影響を受け始めるタイミングは、人の場合では、気圧が下がる前から、気圧が下がり始めてから、気圧が下がり終わって上がり始めてからなど、いくつかのパターンがありますが、犬や猫の場合はいかがでしょうか。

(平松先生)
同じ病気を持っていても気圧の影響を受けるタイミングは人と同様に個体差がありバラバラです。気圧の低下と共に体調不良になる犬もいれば半日くらい遅れて体調不良になる犬もいます。また、同じ個体でも常に同じタイミングではなく時と場合によります。

体調が悪くなるタイミング

気圧の影響を受けやすい犬種は?

気圧や天気の影響を受けやすい犬種はありますでしょうか。

(平松先生)
影響を受けやすい犬種というよりは個体差や持病によります。

犬種、猫種による気圧や天気の影響度

犬の種類、猫の種類(雑種、純血種)または身体的な特徴(体が大きい、細い、鼻が低い、長毛、短毛など)によって天気の影響を受けやすい、受けにくいなどありますでしょうか。

(平松先生)
あまりないように思われますが、短頭種や水頭症好発犬種、心疾患、神経疾患のある犬や猫は影響を受けやすいと思います。種類よりは持病の方が影響が強い傾向があります。

気圧以外が影響していると思われる症状

気圧以外の気温や日照、PM2.5、花粉、紫外線、寒暖差などでペットの体調が悪くなる具体例はありますでしょうか。

(平松先生)
気温に関しては熱中症や夏バテがあります。人より低い気温で熱中症になります。エアコンで部屋の温度管理をしたり、日差しをよけられる場所を作るような対策が必要です。

花粉に影響する例は多くあります。季節性アレルギーがある子は、春はスギ、初夏や秋はその時期に飛ぶキク科やイネ科の花粉に影響を受けるなど、一年中何らかの花粉の影響を受けています。花粉が酷いときは散歩に行かなくてよいと伝えています。散歩に行って体に花粉がつくと掻きむしって酷くなる子もいます。
散歩に行くときは犬用のボディースーツを着用したり、家に戻って来たときはドアの外で濡れたタオルで体を拭いたり、シャワーで洗うなど花粉が付いたままにしないようにする必要があります。また、家族も帰宅したらドアの外で服をはたくなど、室内に花粉を入れないようにすることも大切です。
症状が多くみられる犬種は柴犬で、フレンチブルドッグは症状が酷いことが多いです。
犬はくしゃみや鼻水より皮膚に影響することが多く、猫はあまり多くはないものの、結膜炎やくしゃみ、鼻水などの症状が出ます。

PM2.5や黄砂による症状として、涙目、くしゃみ、鼻水、咳、下顎リンパ節の腫れがあり、花粉症の犬の場合に反応が出やすいと考えられています。

気温の寒暖差が大きいと消化器系に影響が現れるため、腹巻をしたり部屋を暖かくするなどの対策があります。

気圧以外が影響していると思われる症状

犬が【気圧や天気】の影響を受けている時の行動

気圧や天気の影響を受けているときはどのような行動をとっていますでしょうか。

(平松先生)
眠っている時間が増える、暗い場所や狭い場所に入って出てこない、食欲がない、不安で落ち着きがないなどがあります。

猫が【気圧や天気】の影響を受けている時の行動

猫が気圧や天気の影響を受けている時の行動ですが、犬と同じような行動でしょうか。犬の症状と異なる行動はありますでしょうか。

(平松先生)
基本は犬と同じで犬もそうですが、猫は隠れますね。体調が悪いと引きこもります。気圧や天気の影響がなくなると外に出てきます。記録を付ける場合は姿が見えないことを書いておくといいかもしれません。数か月記録を付けると流れが見えてくると思います。

犬・猫が【気圧や天気】の影響を受けているときの対応

犬や猫が気圧や天気の影響を受けているときに、何かしてあげられることはありますでしょうか。

(平松先生)
.構うとこじれてしまうのでお部屋を薄暗くして出てくるまで静かに見守るようにしてください。酷くないと3時間〜半日くらいで出てくると思います。1日引きこもるようでしたら次の日病院に行った方がいいかもしれません。

【気圧や天気】に影響を受ける犬・猫の割合

気圧や天気に何らかの影響を受ける犬や猫はおおよそどのくらいの割合と推定されますでしょうか。

(平松先生)
感覚としては、犬が8で猫が2ですね。犬は体調不良を態度で表してくるので原因がわかりやすいですが、猫は普段からじっとしているので原因がわかりにくいです。震えているとかで連れてこられて検査を行っても何も異常がみられないこともあります。

犬や猫が気象の影響を受けている時の症状についてご理解いただけましたでしょうか。一緒に過ごしている犬や猫の行動が気になった際の参考にしていただけますでしょうか。
第2回は犬や猫の熱中症やお散歩、記録の付け方などのインタビューです。第2回までしばらくお待ちください。

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この記事の監修者
平松育子/獣医師・アロマテラピーインストラクター
平松育子/獣医師・アロマテラピーインストラクター
大手動物病院 院長
アイビー・ペットライティング代表

獣医師歴27年の経験を活かし、各方面で活躍。
得意分野は皮膚疾患で、皮膚科・内科を中心とした一般診療に従事。予防にも力を入れている。
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