名古屋大学環境医学研究所にて、天気と痛みの関係について研究し、医学博士号を取得。
日本で唯一の低気圧頭痛を専門にする産業保健師(現在、内田洋行グループ企業の従業員の健康管理を行っている)。
台風が近づくとなんだか頭が痛い、頭が重く感じる……普段は気象病を起こさないのに台風のときだけ、「台風頭痛」を起こしたりして体調が悪くなるという方もいるようです。
台風が近づくと台風頭痛を起こすのはなぜなのでしょうか?健康気象アドバイザーの舟久保恵美先生にお話しを伺いました。
台風は近づくと頭痛が起こる原因ははっきりと解明されていませんが、メディア・テレビなどの報道で台風が近づくという情報を受けて、心がざわつくということも影響しているかと思います。また台風が自分の住んでいる地域から遠いところに発生したとしても、頭痛や体のだるさの症状が現れる人もいますが、それは気象庁のデータにものらないほどの、ごく小さな気圧の変化が近くでも起こっているからです。
そんな小さな気圧の変化でさえ、日常的に感じられるものなのかと思ってしまいますが、気圧が1hPa(ヘクトパスカル)低くなると海面が1cm上がります。
人間の身体の60%は水分でできていますので、気圧の変化は体にも影響します。
台風が近づくと耳の奥にある内耳がセンサーのような役割をしていて、気圧の変化を脳の中枢に伝えると、その結果、自律神経、とくに交感神経が興奮します。内耳はリンパ液(水分)で満たされており、この流れが悪くなると、わずかな気圧の変化でも脳に対して過剰に伝わってしまいます。その結果、頭痛などの身体の不調に繋がるのです。
また体調以外にも精神面の不調となって現れる場合もあります。気圧や気温の変化があまりにも急激だと自律神経による対応が追い付かず、交感神経と副交感神経のバランスが乱れて、気持ちが落ち着かず、ソワソワしたり、気分の落ち込みなどを感じる場合があります。
ちなみにゲリラ豪雨の場合は一気に気圧が下がるわけではありませんが、大気の状態が不安定になります。こちらも気象庁のデータに出ないくらいでの狭い範囲での気圧の変化は起こるので、台風と同様に体調・精神面の不調を感じる場合があります。
完全に予防するということは難しいですが、頭痛―るなどの天気予報アプリで事前に台風が近づく時期を知って準備しておくことをおすすめします。また台風の近づく時期は大事な会議、旅行など大きな予定はなるべく入れないようにし、心を落ち着かせておくといいでしょう。
浮腫みが出やすい人は体内の水分バランスが崩れている場合があります。水分はしっかり摂り、スクワットやウォーキングなど、とくに第2の心臓と呼ばれる足の筋肉のポンプ作用をしっかりと働かせるような運動をして、血流を良くするようにしましょう。
倦怠感が出やすい人は、汗をかけるような適度な運動を意識してみましょう。血流を促して体温を高めに維持することは痛みの軽減や自律神経のバランスを整えるのにも効果的です。
ゆっくりお湯につかる、好きなアロマの香りを嗅ぐなど自分なりのリラックスの方法を見つけておくといいでしょう。