冬に起こりやすいヒートショックに注意

人の体と血圧

冬は外気温が下がり寒さが強まります。寒さをしのぐために室内を暖房設備で温めますが、家屋のすべての場所を温めることは少なく、浴室や脱衣所の室温は暖房設備で温まった部屋より寒いことが多くなっています。

人の体は体温を一定に保つために体温調節を行っていますが、寒い場所に移動して寒く感じられた際は、寒さに対応するために血管を縮めて、血管内を流れる血液を減らすことにより、できるだけ熱が体外へ逃げないようにします。血管が縮んで細くなると、細くなった血管に血液を流すために心臓は大きな力が必要となり、心臓に負担がかかり血圧が上昇します。

ヒートショックの発生状況

血圧の上昇により、心臓や血管に起こる急性の疾患をヒートショックと呼びます。

暖房の効いた部屋から脱衣所に移動すると10℃以上の温度差があり血圧が上昇します。浴室に入ると脱衣所より更に寒く血圧が更に上昇し、浴槽に体を入れた瞬間との温度差は25℃以上にもなり、血管が広がり血圧が低下します。この血圧の変化が原因と考えられる入浴中の心肺機能停止は12月から1月の寒い時期を中心に発生し、夏の時期は減少しています。

東京都健康長寿医療センター研究所が実施した調査によると、心肺機能停止件数が最も多い1月は最も少ない8月の約11倍となっています。
このように寒い冬の時期の入浴には注意が必要です。

また、年齢別の心肺機能停止件数は年齢が高くなるにつれて増加し、80歳以上は65歳~69歳と比較して男性は約6倍、女性が約11倍となっています。このため、高齢者になるほどヒートショックの発生リスクが高くなります。

冬の室内最低温度

室内の温度差がヒートショックの大きな要因となることから、世界保険機構は2018年に冬の室内最低温度を18℃以上にすることを勧告し、小さい子供や高齢者に対してはさらに暖かくするように求めています。

国土交通省が2014年度から実施している断熱改修等による居住者の健康への影響調査によると、室温が低い居住者や部屋間の温度差が大きい居住者の血圧が高く、室温が年間を通じて安定している居住者の血圧は低く季節差が小さいことが確認されました。このため、国土交通省も国民の健康確保のために断熱住宅の普及を推進しています。
また、環境省では省エネの観点から暖房時の室内の温度を

ヒートショック危険度診断

愛媛県西条市消防本部では「ヒートショック危険度診断」を公開して、セルフチェックを促しています。

ご自身がどれに当てはまるか確認してみてください。

ヒートショックを防ぐ方法

①脱衣所の温度

 温かい部屋と脱衣所の温度差は5℃以内が望ましいと言われていますので、入浴前に脱衣所や浴室に暖房器具を置いて室温を上げるようにしてください。また、入浴前に浴槽のふたをはずしておいたり、シャワーで湯気を充満させて浴室内を温めておくことも有効です。

②湯船の設定温度と湯船に浸かる時間

 湯船の温度は41℃以下にしましょう。湯船の温度を42℃以上にすると自律神経が刺激されて血圧が上がり脈が早くなり、湯船に長く浸かることができず、10分以上浸かると脱水症状を起こす危険があります。このため、湯船の設定温度を41℃以下に設定し、10分程度浸かって体の芯から温まるようにして、リラックスできるようにしましょう。

③湯船に入る前のかけ湯

 いきなり湯船に入るのは急激な血圧の変化を招きますので、必ずかけ湯をしましょう。心臓から離れた足先から徐々に心臓に近づくようにお湯をかけることで心臓への負担を減らし血圧の急激な変化を防ぐことができます。首までお湯に浸かると心臓に負担をかけますので胸のラインぐらいが良いでしょう。

④湯船から出る際

 お湯に浸かっているときは体が温められ血管が広がり血圧が低下しています。湯船から急に立ち上がると脳まで血液を運ぶことができず、めまいを起こしたり、失神することがあります。湯船から出るときはゆっくりと立ち上がることを心がけましょう。

⑤入浴前後の水分摂取

 入浴すると汗をかき脱水状態になりますので、入浴前後に300ml程度の水分を摂るようにしましょう。

⑥食後やアルコールの飲酒後の入浴

 食事をすると消化のために血液が胃腸に集まり、脳への血流が低下し、食後低血圧を起こしやすくなります。特に高齢者は自律神経系が衰えているため、食後低血圧を起こしやすくなりますので食後1時間以内の入浴は注意が必要です。
 飲酒した直後に入浴すると、体が温まることで血液の循環が良くなり、大量の血液が全身に送られ脳や心臓の血流が減少し、不整脈や心臓発作などを引き起こす可能性がありますので飲酒後の入浴は避けましょう。

冬は脱衣所や浴室など室内の温度を暖房器具で温めるようにして、湯船の入り方などに注意してヒートショックの発生を防ぐようにしてください。


参考資料
・東京都健康長寿医療センター研究所 調査
  わが国における 入浴中 心肺停止状態発生の 実態
・国土交通省 断熱改修等による居住者の健康への影響調査
・恩賜財団済生会 病気解説特集 冬場に多発!温度差で起こるヒートショック
・西条市消防本部 「ヒートショック」に気をつけよう!
・サントリーウエルネスOnline 健康情報コラム

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この記事の監修者
飯山 隆茂
飯山 隆茂
気象予報士/健康管理士

気象予報士として25年以上にわたり気象情報の提供に従事。頭痛ーる開始後からサービス追加に関わり、健康管理士取得後は気象と健康の両面から健康管理の普及に努める。

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